私は長年勤めた助産婦の職を退き、家族とともに静かに暮しています。
穏やかな日々を送っていると、苦労を重ねた昔のことがとめどなく思い出され、時折遊びに来る孫たちに語り聞かせたりしておりました。
そんなとき、以前から親しくしてくださっていた鈴木輝子さんから、ご自身がお書きになった自伝『遠くの灯り 産婆・助産婦六十三年の歩み』(南信州新聞社)をいただきました。それを拝読して、鈴木さんのこれまでの歩みに感銘を受けるとともに、私も自分の思い出を書き残したいと思うようになりました。
私は働き詰めに働いてきたので、書き残すといっても、頭に浮かぶのは地道に打ち込んだ仕事のことばかりで、人様の目を惹くような出来事は多くありません。
しかし、お世話になっている人たちに、私がどのような生き方をしてきたのかを、感謝の気持ちも込めてお伝えできたらと考えたのです。
それからは、頭に浮かぶ思い出を紙にしたためておりました。書いたものは孫たちに読んでもらったりしていたのですが、最近になってそれらを自伝にまとめて出版する機会に恵まれました。
すべて記憶を頼りに書いておりますので、昔のことは不正確な部分もあるかと思いますが、その点はどうかご容赦をお願いいたします。
平成十九年七月
久保田ツルヨ